玉掛け作業に使用する吊り具(スリング)の種類と点検基準

玉掛け作業に使用する吊り具(スリング)の種類と点検基準

玉掛け作業に使用する吊り具(スリング)は、主に工場や建設現場などでよく利用されています。

重量物を持ち上げる際に欠かせない存在であり、その種類もさまざまです。吊り具を使用する際は、安全を確保するために適切な種類を選ぶことが重要です。

この記事では、適切な吊り具を選択して安全に使用できるように、一般的な吊り具の種類やメリット・デメリット、点検基準について解説します。



吊り具の種類

吊り具とは、クレーンやデリックを用いて重量物を持ち上げるために使用するロープ・ワイヤーのことです。スリングや吊り索(つりさく)などと呼ぶこともあります。主に3つの種類に分けられます。


①ワイヤロープスリング

ワイヤロープスリングは、吊り荷作業用にロープの両端を加工した吊り具のことです。

伸びが少なく強度が高いという特徴が挙げられます。


メリット・デメリット

ワイヤロープスリングのメリット・デメリットは以下のとおりです。



概要
メリット
  • 引っ張る力が強く、効率よく重量物を運搬できる
  • 耐衝撃性・耐熱性に優れている
  • 長尺物の吊り上げに適している
デメリット
  • 負荷がかかると吊り荷の回転やロープの損傷が発生しやすい
  • 人が扱うには重く、繊維スリングと比べて作業性が劣る
  • 潤滑剤のロープ油によって荷物が汚れやすい


硬鋼線を材料としており、エレベーターやクレーン、吊り橋などに使用されています。


点検基準

玉掛け作業に使用するワイヤロープスリングは、損傷や腐食、変形などが生じている場合に、補修・廃棄が必要です。

使用禁止となる基準については、『クレーン等安全規則』第215条で以下のように定められています。


▼クレーン等安全規則 第215条

第二百十五条 事業者は、次の各号のいずれかに該当するワイヤロープをクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。
一 ワイヤロープ一よりの間において素線(フイラ線を除く。以下本号において同じ。)の数の十パーセント以上の素線が切断しているもの
二 直径の減少が公称径の七パーセントをこえるもの
三 キンクしたもの
四 著しい形くずれ又は腐食があるもの

引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則


▼ワイヤロープスリングの点検基準

  • 素線の数の10%以上で断線が見られないか
  • 直径の減少が公称径の7%を超えていないか
  • ワイヤーやロープなどがねじれたまま使用していないか
  • 激しい変形や腐食などが生じていないか
  • 編み込み部分が緩んでいないか


特にワイヤーは、キンクと呼ばれる“ねじれ”が起こりやすいといわれていますが、破棄されずに危険なまま放置されているケースもあります。点検でキンク状態を見つけた場合は、必ず破棄することが大切です。

出典:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則


②繊維スリング

繊維スリングとは、高強度の合成繊維でできた吊り具のことです。ナイロンやポリエステルなどの繊維で編み込まれており、ワイヤロープよりも軽くて扱いやすいという特徴が挙げられます。種類は、ベルトスリングとラウンドスリングの2種類があります。


▼繊維スリングの種類

ベルトスリング
帯状の平らな繊維でできた吊り具
ラウンドスリング
筒状の繊維でできた吊り具


メリット・デメリット

繊維スリングのメリット・デメリットは、以下のとおりです。


概要
メリット
  • 軽量で柔らかく、吊り荷の作業効率を向上できる
  • 小さく折りたためるため、保管や持ち運びがしやすい
  • サビが発生しにくく、腐食による損傷を防げる
  • 荷物を傷つけにくい
デメリット
  • 熱に弱く、高温の荷物の吊り作業には向かない
  • 鋭角な物を吊り上げる際は繊維スリングの損傷の可能性があるため、保護具が必要


点検基準

繊維スリングは、熱や日光、薬品の影響を受けやすく、使用すると摩耗損傷が進むため、適切な点検が必要です。また、化学薬品を使用する現場では、薬品に強い専用の繊維スリングを使用します。

製品によっては使用限界が分かる“リミットサイン”という機能がついており、このサインが現れた場合は交換の目安です。


▼リミットサインの例

リミットサインの例


玉掛け作業に用いる繊維スリングの使用を禁止する基準は、『クレーン等安全規則』 第218条で定められています。


▼クレーン等安全規則 第218条

第二百十八条 事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープ又は繊維ベルトをクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。
一 ストランドが切断しているもの
二 著しい損傷又は腐食があるもの

引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則


▼繊維スリングの点検基準

  • 全幅にわたって織り目が分からない程度の経糸・縁の損傷、毛羽立ちが見られないか
  • 幅方向の1/10、または厚さ方向に厚さ1/5に相当する傷がないか
  • 使用限界標示があるものは、その限界標示が露出・消失していないか


キトーでは、引張強度・弾性伸び・耐水性・耐光性に優れた繊維スリングを提供しています。繊維スリングについては、こちらをご確認ください。

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出典:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則


③チェーンスリング

チェーンスリングは、チェーン・フック・リングを組み合わせた吊り具のことです。ワイヤロープスリングや繊維スリングと比較して、耐熱性・耐久性に優れているという特徴が挙げられます。

荷物の形状に合わせて、金具の種類とチェーンの本数を選ぶことで、1本吊りや2本吊り、3本吊りなど多種多様な吊り荷が可能です。


メリット・デメリット

チェーンスリングのメリット・デメリットは、以下のとおりです。



概要
メリット
  • 熱に強く、温度の高い場所や高温の荷物の吊り荷が可能
  • 摩耗に強く、型くずれしにくい
デメリット
  • 本体の重量が重いため、こまめな玉掛け作業には不向き
  • 繊維スリングと比較して耐食性が低く、サビに弱い


点検基準

チェーンスリングは、摩耗や変形などがある場合、使用してはいけない廃棄の基準が『クレーン等安全規則』第216条で定められています。


▼クレーン等安全規則 第216条

第二百十六条 事業者は、次の各号のいずれかに該当するつりチエーンをクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。
一 伸びが、当該つりチエーンが製造されたときの長さの五パーセントをこえるもの
二 リンクの断面の直径の減少が、当該つりチエーンが製造されたときの当該リンクの断面の直径の十パーセントをこえるもの
三 き裂があるもの

引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則


▼チェーンスリングの点検基準

  • 5リンク分を基準として、チェーンの長さが製造時より5%以上伸びていないか
  • チェーンリンクの断面の直径が摩擦によって10%以上減少していないか
  • き裂や欠損などが見られないか
  • チェーンやリンクなどが激しく変形・ねじれていないか

キトーのチェーンスリングでは、厳しい作業環境でも耐えられる錆びにくいニッケルメッキ仕様の製品をご用意しています。詳しくは、こちらをご確認ください。

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出典:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則



まとめ

この記事では、玉掛け作業に使用する吊り具について以下の内容を解説しました。


  • 吊り具の代表的な種類
  • 種類ごとのメリット・デメリット
  • 吊り具の点検基準


玉掛け作業に使用する吊り具には、主にワイヤロープスリング、繊維スリング、チェーンスリングの3種類があります。それぞれ柔軟性や耐久性、耐熱性などの面でメリット・デメリットがあるため、用途に応じて適切な吊り具を選ぶことが重要です。

現場での事故を防ぐためにも、各吊り具の点検基準を踏まえて、安全に使用できる状態かどうか確認しておくことが大切です。点検の際には、以下のチェックリストをご活用ください。


▼吊り具の点検チェックリスト

種類
チェックリスト
ワイヤロープスリング
  • 素線の数の10%以上で断線が見られないか
  • 直径の減少が公称径の7%を超えていないか
  • ワイヤーやロープなどがねじれたまま使用していないか
  • 激しい変形や腐食などが生じていないか
  • 編み込み部分が緩んでいないか
繊維スリング
  • 全幅にわたって織り目が分からない程度の経糸・縁の損傷、毛羽立ちが見られないか
  • 幅方向の1/10、または厚さ方向に厚さ1/5に相当する傷がないか
  • 使用限界標示があるものは、その限界標示が露出・消失していないか
チェーンスリング
  • 5リンク分を基準として、チェーンの長さが製造時より5%以上伸びていないか
  • チェーンリンクの断面の直径が摩擦によって10%以上減少していないか
  • き裂や欠損などが見られないか
  • チェーンやリンクなどが激しく変形・ねじれていないか


キトー』では、さまざまな吊り荷に対応した吊り具をご用意しております。詳しくはこちらをご覧ください。

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